いつか?
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 



さて、11月も押し詰まり。
連休前の金曜に、丘の上の女学園で催されたは、
この時期恒例の全校マラソン大会で。
良妻賢母、もとえ、文武両道を重んじてのこと、
礼法作法や学業のみならず、体力も運動神経も大事と、
体育祭だけでは飽き足らず、こんな寒い中を走れと言うかと、
生徒達からはやや不評な代物なれど。
水泳の授業があるよかマシだと、
そこはしぶしぶのツユだく、もとえ 唯々諾々と、
用意ドンの号砲に送り出されてゆく麗しのヲトメらで。

 「あ、紅ばら様だわvv」
 「さすが、お早い〜vv」
 「頑張ってくださいませ〜vv」

体調が悪いとか虚弱だからと
見学に回っておいでのお嬢様がたがグラウンドで見守る中。
最後にスタートしたはずな二年の三木様が、
下級生も三年もぶっちぎり、
上位三指に入るのはいつものこと。(いつもって…)笑
さすがに一番最初にスタートした
一年生たちのトップ集団を抜き去るのは無理だったが。
それでも、大して呼吸も乱さぬままに
余裕のゴールを決めてしまわれる勇姿は、
下級生たちからの歓声を独占状態という凄まじさ。
それから待つこと…小半時くらいか。
手際よく着替え終わった、金髪痩躯のお友達が見やる中、
二年生集団の中ほど辺りに紛れ込む格好で、
三華様がたの あと二人が戻っておいで。

 「寒い〜〜〜っ。」
 「何言ってますか、こっちは汗だくですよ?」

 さてはシチさん、手ぇ抜きましたね。
 まぁあ、言うに事欠いてそんな濡れ衣を…と、

喧嘩の真似ごとを始める二人なのへ、
まあまあ まあまあと、
こちらも恒例のショウガの利いた飴湯を運んで来た久蔵殿を、
おいでおいでと招き寄せ、

 「今日はこのまま解散だから、
  ヘイさんトコに寄ってって少し休みましょう。」
 「……。(頷、頷)」

それをこそりと伝えたかったがため、
わざとらしくも言い争いの真似ごとをした白百合さんとひなげしさん。
寒風吹きすさぶ校庭から教室へ駆け込んで着替えると、
HRもそこそこに、
セーラー服のスカートを、コートの裾からちらりとひるがえさせて。
まだ少しは温かい色合いの陽だまりが、
前庭のあちこちに零れる中、軽やかに足を運び。
辿り着いたは、古民家を移設したという味のある佇まいの甘味処。
店舗ではなく、住居側の玄関から上がらせていただいて。
ひなげしさんのお部屋へ通され、
いかにも日本の冬を思わせるコタツが出されてあったのへ、
きゃあvvとはしゃいだのが七郎次なら、
きちんと正座してから、おもむろにお膝へ布団を掛けて、
ふうぅう〜っと深い吐息をつきながらその身を萎えさせるという
どこの温泉へつかってますかと言いたくなるよな浸り方をするのが久蔵だ。

 「お二人とも、お家でコタツ出せないんですか?」

お茶の支度を一式、台所から抱えて来た平八が訊けば、

 「出してる部屋もなくはないんだけどねぇ。」

七郎次も久蔵も
本格的な洋館仕様の洋間で寝起きしているので、
他の家具との高さや雰囲気というバランスが
あまりにも合わずで、
自分の部屋には到底出せないそうな。

 「学校の教室の入ってすぐに、
  掘りごたつがあるよなもんだもの。」

 「……。(頷、頷)」

それはまたシュールな…。(笑)

 「椅子タイプのもあるって聞きますが。」

天板へへちょりと頬をつけているお二人へ苦笑をし、
確か、北欧の家具にあったのを改良したのがと思い出した平八なのへ、

 「ダメですよぉ、そんなの。」

七郎次が厳しくもダメ出しをする。

 「コタツはやっぱ、
  こうやって座り込んで入るもんでげすよぉ。」

マラソンで疲れたらしく、
お懐かしやの幇間言葉まで出る始末。
しょうがないですねぇと、丁寧な手際でミルクティーを淹れて差し上げ、
気が済むまで休めば良いですよとし。
自分はPCを立ち上げると、
目新しい情報は入ってないかなという
チェックを始めたひなげしさんだったが、

 「ああそうだ、今日って“いい夫婦の日”なんですってね。」

この時期っていうと、
ボジョレ・ヌーボーの解禁とか流行語大賞のノミネートとか
あれこれどっとイベントがあるから、
今年なんて埋もれてんじゃないかって思ったんですがと、
何の気なしに口にしたらしい彼女がそのままお顔を上げたれば、

 「……。//////」
 「夫婦…。」

 「何ですか、二人とも。」

疲労と寒さに身動き出来ませんと、
すっかり“こたつむり”になっていたはずが。
片やは頬を染め、片やは感慨深げなお顔になっており。

 「シチさんのは
  勘兵衛さんとの新婚生活でも想像したんでしょうが、」
 「な…っ。何 言い出しますか、ヘイさんたら、/////////」

きゃあぁん、恥ずかしいじゃありませんかと。
頬を押さえて含羞むヲトメなのは毎度のことだから、
後でゆっくり聞いて差し上げるとして。

 「久蔵殿の思うところってのをお聞きしたいですねぇ。」
 「あ、それはアタシもvv」

兵庫さんがお相手の話しか思いつかないんだけれどと、
ふふふと微笑った七郎次なのへ、

 「ちっちっち、甘いですよシチさん。」

平八が人差し指を振って見せ、

 「最近の久蔵殿は、
  あの丹羽良親さんと
  行動を共にする機会も増えつつあるんですからね。」

 「……え?」

いやそれは、ほら。
久蔵殿のお家の運転手さんを
時々担っておいでだからと言いかかり、

 「……何ででしょうね。
  確か良親様って、
  ブライダルチェーンの御曹司じゃあなかったっけ?」

ホテルJとの提携上の都合とか?と、
あらためて訊く白百合さんなのへ、

 「???」

そういったビジネス関係の話はまだ知らされぬままなのか、
当事者であるヒサコお嬢様、キョトンとしているばかりであり。
そんな当事者様をさておいて、

 「将来は榊せんせえと共にって、
  他への選択肢も作らぬままでいた久蔵殿ですが、
  ここに来て意外な伏兵ってことでしょうかねぇ。」

 「いや、それはないでしょ、ヘイさん。」

確かに、
ここ最近の彼女らの行動の、ここ一番というところに現れては、
最も手ごわい遊撃手であり、
ポイントゲッターでもある久蔵を(何のポイント?)
いなしたり諭したり、
果ては、見事取っ捕まえてしまったり。
無茶ばかりする破天荒ガールなお嬢さんたちを
上手に制したりフォローしたりという方向での辣腕ぶり、
きっちりと拝させていただいてる存在ではあるけれど。

 「夫婦にならんとするからには、多少なりとも恋愛要素が…。」
 「榊せんせいとの間に、そういうものが育ってますかねぇ。」

途端にひゅんっと飛んで来た籐の鍋敷きをはっしと受け止めつつ、

 「確かに長い歳月で培った、
  呼吸というか以心伝心はおありなようですが。
  だったら、
  ひょいと現れた丹羽さんとの呼吸の合いようはどうですか。」

ひなげしさんが指摘したのは、
良親殿による ここ最近のあれこれへの干渉のうち、
久蔵さんへの直接的な手出しが多いことならしく。

 「それは、一番手ごわいというか、
  久蔵殿を制すれば、アタシらも止まらざるを得ないからでは?」

 「それだけでしょうかねぇ。」

 なんてのか、榊せんせえは、
 久蔵殿を妹みたいにしか思ってないような気がするんですよ、私。

 あ、何てことを、ヘイさんたらっ。

さすがにそれは聞き捨てならぬと、
七郎次が久蔵を懐ろへ掻い込みながら、
そのまなじりを吊り上げかかったが、

 「だから、ですよ。」

再び、指を立てての
“ちっちっち”とやって見せた平八が言いたかったのは、

 「なぁ〜んか煮え切らない兵庫さんには、
  いっそのこと危機感を持ってもらった方が良いのかもしれない。」

 「…っ☆」
 「……?」

あまりに唐突な展開へ、玻璃玉のような双眸を瞬かせたところまでは、
白百合さんも紅ばらさんも同じだったが、

 「……ヘイさん、それってナイスvv」

グッジョブっと親指立ててしまうなんて、白百合さんたら はしたない。
……じゃあなくて。(笑)

 「そっかぁ。鞘当てだな、つまりvv」
 「ええ。うかうかしてると怪しい紳士に久蔵さんを奪られるよとvv」

そういう煽りでも焚き付けないと、
あのせんせえ、妙に鈍感だから…なぞと。
お友達二人が何やら嬉しそうに通じ合っておいでのお話が、
今一つよく解らないらしい 当のご本人様。

 “…帰ったら訊くか。”

どうやら兵庫のことらしいので、本人に意味を紐解いてもらおう…なんて。
もっと半端ないことをしでかしそうなヒサコ様ご本人だったりもして。
とんでもない展開になる前に、
き、気づいてあげて、白百合様でもひなげし様でも……っ。






     〜Fine〜  13.11.22.


  *う〜ん、
   どこが“良い夫婦の日”のお話なのやら。(まったくです)
   でも、兵庫さんは本当に何かインパクトのある切っ掛けでもない限り、
   久蔵さんを伴侶的な対象には見ないかも知れんのよねぇ…。
   まさか綾麻呂様、そこまで読んで良親様をヒサコ様に近づけたのかな?

ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv

メルフォへのレスもこちらにvv


戻る